大樹 連司
小学館
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非常にいい作品だった。
青春!友情!勝利!
いや、勝利はないけれど、どうしてロケットを取り扱う青春作品はこう、どれもこれも外れがないんだろう。
王道といってもいい。
すでにテンプレートもすらある感じもする。
主人公はプロフェッショナルじゃない。ロケットに関しては素人だ。
理系的な才能がほとんどない。器用貧乏なところがある。
ロケットに対する興味もあまりない。
開発の言い出しっぺでないことも多い。何かのきっかけがあって巻き込まれる。流れに流されているうちに誰よりも夢中になっている。
別の目的を持っていて、それを達成するためにロケットが必要だったのが、気づいたら手段と目的が逆転していた、ということが多い。
言い出しっぺでないことから、リーダーという立場ですらないことも多い。カリスマ性は少ない。大体はサブリーダーの立場で、便利屋となっている。
アクが強い天才たちのいるチーム、彼らのコミュニケーションのかすがいとなる。
チームがバラバラになりそうな時に、みんなを説得し、立ち直らせる役割を担う。
主人公はロケットについて知らないし、興味もない、才能もない一般人。
そこが感情移入できるきっかけとなる。
天才には感情移入できないし。
見方を変えると、天才やプロフェッショナルがチームにいない限り、ロケットは作れないということになる。
一般人がロケット開発に関われるのは、せいぜい便利屋が限界なのだ。
そのシビアさはどのロケット作品でも忘れられていない。
ロケット作品を書く人は大抵ロケット大好きで、ロケット開発の困難さをよく理解しているからだろう。
ロケット作品には作者のロケット愛が詰まっている。
だから面白い。
5点。